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サイバー防御からサイバー攻撃へ―サイバー戦の検討に入った陸上自衛隊

 サイバー攻撃に対して我が国は、防御のみを基本的な態勢としている(「自衛隊のサイバー攻撃への対応について」)。能動的なサイバー防御についても、これから検討を行うという段階だ(「能動的サイバー防御」法整備、有識者会議の設置発表」)

 こうした中、陸上自衛隊は能動的なサイバー防御を超えてサイバー攻撃についても検討を開始していることが、本会の情報公開請求により防衛省が開示した陸自部内資料から明らかになった。

 その資料が、「『領域横断作戦に関する研究』の研究成果について(報告)(研定第3号)」(教訓研本研第11号 2021年3月19日)だ。

 領域横断作戦とは、陸・海・空といった従来の領域に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を有機的に融合することで、その相乗効果により全体としての能力を増幅させ、個別の領域における能力が劣勢である場合でも、全体としては優位に立つという戦い方である(令和元年版『防衛白書』「<解説>領域横断作戦について」)

 本資料では、下図の通り、領域横断作戦の一環としてサイバー戦の検討が行われていた。なおサイバー戦とは「コンピュータ、コンピュータ・システムまたはその他の接続されたデバイスに対するデータ・ストリームを通じたオペレーションであって、武力紛争の文脈において戦闘の手段または方法として使われる」ことである(鳥居 真由子 2等空佐「サイバー攻撃の武力紛争法上の課題」『エア・アンド・スペース・パワー研究』(航空自衛隊幹部学校)第7号(2021年3月31日)121頁)

 その内容については、墨消しばかりで知ることができないが、従来の政策の範囲を超えている故に不開示とされたと考えるのが妥当であろう。

 注目すべきは、領域横断作戦―即ちこのサイバー戦も―が、下図が示す通り競争段階においても行われることである。競争段階(注)とは、武力紛争以前の段階をいう(報告書5頁)。なお武力紛争段階とは武力攻撃事態認定以降の段階をいうことから(同6頁)、競争段階とは武力攻撃事態認定前の段階―即ち平時も含まれる―ということになる。

 なお報告書の別の箇所では、競争段階においては、ノン・キネティック手段を主体に全領域において自らに有利な環境を構築・維持するとしている(8頁)


(注) ここでいう競争段階という用語は、米軍のドクトリンで採用されている「競争の連続体」という概念(最近、自衛隊部内資料で紹介される場面を見かけるようになった)から採り入れたものと思われる。

 競争の連続体とは、世界を平和な世界(a world at peace)と戦争状態にある世界(a world at war)に区分するというよりは、協力(cooperation)、武力紛争未満の競争(competition below armed conflict)、武力紛争(armed conflict)の状況が混在する、永続的に競争が行われている世界を示している(下図がその概念図)

【図出典】(資料番号:22.12.3-1)「研究瓦版(4-11)進化する作戦コンセプト」(2022年8月2日 航空自衛隊幹部学校航空研究センター)11頁。

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